中央アルプス

 

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       中央アルプス足跡の第一歩 

  初めて私が中央アルプスに足跡を残したのは、昭和38年7月のことである。当時の日記を紐解くと、

「私は2泊3日で南アルプス甲斐駒ケ岳へ黒戸尾根尾を登って早川尾根の縦走し、その足で職場のハイキン

グ部の中央アルプス山行に参加した。20名の同僚が集まると職場の旅行に行くような気分の人も多く、迷

子がでるように統制がとれずに大変だった。伊勢滝までバスで入り、濃ヶ池付近にキャンプして、そこから

中岳を経て駒ケ岳に登った。ここまでは楽なコースだった。しかし、宝剣岳は状況が一変して緊張の連続で

神経を使っての登り下りで草臥れてしまったものの、千畳敷カールへ下りたら一面のお花畑に癒されホッと

一息つけた。ここから長い中御所谷沿いの山路を下るも、途中で日暮れを迎えてしまい、水を汲める沢に近

い所でキャンプして夜遅くまでキャンプファイアで楽しんだ。」と記されている。その後、3回ほど訪れて

いる。


上ヶ洞〜御嶽山〜木曽福島駅〜木曽駒ケ岳〜

  宝剣岳〜熊川岳〜空木岳〜池山尾根〜駒ヶ根鉱

 泉〜駒ヶ根駅
 
 
  
  ●H4.8.26〜28

  上ケ洞〜長峰峠〜木曽温泉〜赤岩巣〜四合目半正小屋〜木曽福島駅

    登山客まばら晩夏の富山駅

 木陰にて猿の戯る炎暑かな

 夏空やダム連なりて川細る

 飛騨の山しおれる程の大暑かな

 涼風や岩魚焼きたる峠茶屋

 コスモスや木曽御嶽は雲の中

 山の端へ道続きをり夕薄暑

 屋根石を置く集落や夏夕日

 御嶽の零神碑建つ夏木立

 夏雲に見え隠れせし木曽御嶽

 年前、足の故障で中座してしまった乗鞍岳から木曽御嶽への歩行を急遽実施することにして、夜行列車

を利用して富山経由
高山に入った日和田高原行きのバスに乗ったのは私独りで、飛騨川を遡って懐かし

の上ケ洞に着いた。空は晴れ渡り、体調は快調そのもの、張り切ってスタートする。国道361号は自動車

の往来も無く隧道は電灯もあるので安心してあるける。高根第一ダム手前で野猿の群れを見た時は急いで通

過したものの気持ちの悪いことこの上なし。飛騨川の終点高根大橋までの短い区間にダム湖が4つもあった

のには驚いたむ
これでは川も痩せて自然破壊も進むこと間違いなし高根大橋を左に行けば野麦峠。橋を

渡り日和田高原を目指して東上すること2時間弱で日和田高原に着いた。リゾート地として開発中。そこか

ら1時間弱で1503mの長峰峠に着いたが、木曽御嶽は雲の中。峠から西野部落で右にまがり県道71号に入

。黒沢まで3時間かかると地元の人は言う。気の遠くなる時間だ。しかし、歩いてみると「そばの花や

高原野菜に触れたり、新しく出来たロープウェイスキー場の入口を確認したり、結構たのしかった。3年前

の思い出の黒沢登山口についたときはホッとした
赤岩巣の「中の湯本館」に泊り、白川の流れの音を友に

した。
 
 翌日は4合目半正小屋まで行き、ここから一路木曽福島
を目指して歩き出した。途中、幾つもの霊場が

あって道沿いには
神碑が建立されている。そこへ冷気が漂うとなれば、明るいイメージはわかないし、そ

のことが信仰の山としての雰囲気を醸し出しているのかもしれない。2時間弱で黒沢に着いた。振り返ると

赤茶けた木曽御嶽の頂上が見えたので今回始めて御嶽山のシャッターを切った。足のマメも潰れだし
ので

第に歩みも遅れだした。途中で昨日旅館であったタクシーの運転手が車からもうずぐだから頑張れと声を掛

けてくれたときは嬉しかった。
足を引きずりながらでも4時間40分で炎天下の福島駅に着いて、乗鞍岳と

木曽御嶽山を結ぶことが出来た。




 ●S63・1・15〜17

   四合目半正小屋〜金剛堂〜覚明堂〜剣が峰〜四合目半正小屋

 
スキーラッセル汗ばむ背中に風吹きぬ

 剣が峰雪煙上げて空青し

 雪嶺の吸い込まれたる青き空

 雪深し石碑埋もる八合目

 アイゼンも這い松漕ぎに難儀して

 風雪に這い松耐えて低きかな

 風強し身を屈め雪嶺を行く

 登頂の握手も凍え言葉なし

 雪嶺にシュプールつけて憂いなし

 雪嶺より星降る夜の下山かな


 
木曽御嶽山には乗鞍岳で山スキー合宿をしていた頃より、一度スキーで登ってみたいという夢を持って

いた。23年後に私は実現すべく、職場山岳部の若手を誘って木曽御嶽四合目半正小屋まで、私のファミ

リアに5名を乗せて入山した。

 初日は偵察のため森林の中の薄暗い急な山道をラッセルしながら7合目行

場小屋(2170m)まで登った。積雪は1m以上あってスキーなくしてはラッセルは出来ないことを確認して引き

かえして来た。

 二日目、「天気だよ」と起こされて、窓を開ければ薄暗い空に星がキラキラと煌き、雲ひとつ無い夜明

け空で御嶽山もはっきりと見える。「今日は御嶽山に立つぞ」と決意を新たにし、帰りが遅くなることも

考えてヘッドランプを持って出発。7合目までは昨日のトレースを追い楽をする。そこから先は未知の領

域なので気を引き締めて取り付く。森林高度を上げる度に林相が変り、木々の背丈が低くなっていく。8

合目金剛堂付近はついに這い松へと変化してしまう。
  
 ここからの展望は素晴らしく、北アルプスや中央アルプスが一望できる。特に御嶽山に登る切っ掛けを

作ってくれた乗鞍岳も望める。夢中でシャツターを切る。8合目半の這い松地帯までスキーで登り、そこ

から先は、雪が少ないのでスキーを脱いで、アイゼンを付けずに9合目の石室山荘まで這い松の中を泳ぐ

ように悪戦苦闘しながら登る。石室で昼食を食べていたら天気が崩れだしたので、早々に山頂を目指す。

稜線に出れば、風が強く吹き飛ばされそうになることしばしばで、ピッケルを立てて踏ん張ること数回。

若手が先行して山頂(3063m)に立つ。私が一番遅れて立った。登り切った時の第一声は「ヤッタ

ー」とばかり大声で叫んだ。23年前の思いが仲間の協力で今日達成できたのだ。寒くて歓びの声はない

が、お互いに堅い握手をして登頂を喜びあった。天候がますます不安定になりだしたので記念写真を撮

り、早々に山頂を後にした。

 下りは足取りも軽く、強風の中、スキーデュポ地点まで40分足らずで下りて来られた。スキーに履き

替えて滑り始めるも、全員が疲れていることもさることながら、道幅が狭いことや段差があって下りは思

うように滑らす、転倒の連続であった。それでも全員怪我もせず7合目行場小屋に4時半に着いた。ここ

まで来れば心配は要らないが、日が落ちてしまったので、ヘッドランプを頼りに山道を避け遠回りである

が林道を下った。小屋の人に心配を掛けてはいけないので若手を先行させた。小屋の主は心配していた

が、我々の下山をみんなが喜んでくれた。


●H1・7・7〜8


  駒ヶ根駅〜駒ヶ根鉱泉〜木曽駒ケ岳〜駒の湯〜木曽福島駅


 梅雨明けず山への思い募りけり

 ロープウェイ渡る谷間の残り雪

 梅雨晴れ間急ぎ足なる登山かな

 雪渓の歩み遅れし老夫婦


 梅雨曇りガレの広がる宝剣岳


 お花畑熟女のはしゃぐ声ばかり

 山小屋の窓越しに見ゆ木曽御嶽

 梅雨雲に追い立てられて山を去る

 たつぷりと残雪のある深山かな

 赤テープ導く山路雪多し

 七夕の朝は久しぶりに晴れたので明日まで持つだろうと予測して、その日の夜行列車で飯田線駒ヶ  

根駅
向かった。天気は良くホッとする。昨年の秋、仙丈ヶ岳から駒ヶ根駅まであるいた時の「足のマ

メが潰れた痛々しい姿」が蘇って来るが、今日は駅から駒ヶ根鉱泉へと快調に歩き出す。
鉱泉は立派な

グラウンドホテルに建替えられていた。

 ロープウェイを利用して千畳敷まで行き、今年は乗越浄土まで残雪が多く、アイゼンなしには登れ

ないような状態だった。だから登山者は長い列になってしまう。乗越浄土に着けば、南アルプスが手に

とるように見渡せ、足元にはシナノキンバイが咲き誇り、正しく極楽浄土である。稜線には雪が無いの

で直ぐに駒ケ岳に立てた。頂上小屋で木曽福島方面の情報を入手すると、山陰に残雪が多いのでアイゼ

ンが必要で、昨日下った人がいたのでその人のルートを下るようにアドバイスしたくれた。

 霧が深くなりだしたので玉の窪
小屋からから一直線に玉の窪沢に入り、雪渓を下りだすが、その長

さには驚いた。時々、踏み跡も無くなり、広い雪渓を方向を定めて下る以外なし。小さな木の枝先の赤いシール

を見つけたときは嬉しかった。難所を越えて登山道に出られた。その時に一人の若者が登ってきてどうするか迷

っていた。「私の踏み跡」を辿るようにアドバイスしたら安心て登って行った。7合目に避難小屋がある。木曽福島

から登ってくると一日では頂上に立てないのでこの小屋が建てられたという。更に下ると重装備の3人パーティに

会うと、彼ら避難小屋泊りとか。登山口となっているキビオ峠まで急斜面で長い道のりにはうんざりさせられた。峠

から駒の湯を経て1時間で木曽福島駅に無事に到着した。

日本列島横断山行関連登山

●S38・7・27〜29


  伊勢滝バス停〜木曽駒ケ岳〜宝剣岳〜千畳敷〜中御所谷〜登山口



●S42・10・14〜16

  ロープウェイ〜木曽駒ケ岳〜宝剣岳〜熊沢岳〜空木岳〜南駒ケ岳〜駒ヶ根鉱泉

木曽殿山荘前

空木岳山頂の私

南駒ケ岳を振り返る




●H8・9・19〜21

  ロープウェイ〜木曽駒ケ岳〜宝剣岳〜熊沢岳〜空木岳〜南駒ケ岳〜仙涯
嶺〜越百山〜伊奈川D

 俄かに雲の動きだす野分け前

 登山して疲れ身癒すストーブかな

 山小屋の天気図に見る台風の目

 秋雨や越えねばならぬ岩の峰

 霧雨の隠したる千尋の谷

 秋雨止みて登り来し山見え出しぬ

 遠富士見ゆる稜線の白露かな

 秋彼岸寂しき山の遭難碑

 避難小屋紅葉の中に埋没す

 秋天を突く岩峰の道険し

 初日、駒ヶ根駅で友と会い、大阪から来たという老夫婦とタクシーを相乗りしてロープウェイ乗り場へと

思って出発したら、乗り場手前の道路崩壊工事中で歩いて渡り、バスに乗り繋いだ。山頂駅降りれば、燃え

立つような紅葉の真っ只中、売店で温かなコーヒーを飲んでから乗越浄土を目指す。登山口入口看板に夏に

行方不明の人の捜索書が張られていた。
ここは事故発生が高い場所でもあるので注意が肝心。乗越浄土はパ

ッと紅葉に燃える山の景色が広がり、これまでの苦しさを忘れさせてくれる。写真をと思うが雲が切れずチ

ャンス無く、仕方なく宝剣山荘で宿泊手続きをして、台風も近づいていることもあるので、夕暮れの駒ケ岳

へ友を案内する。山頂に立てば少し天気も回復したので宝剣岳の岩場を入れて三ノ沢
の写真を撮る。夕食

後、小屋の天気図を見ると天気は悪くなるばかりだが、台風は遅れ気味なので幾らか救いとなった。


 二日目、小屋の屋根を雨が打つ。やがて小止みになり霧雨に変った。天気予報は一日雨らしい。どうあ

れ今日は空木岳の駒峰ヒユッテまで行かねばならないので6時前に出発。岩場も濡れているので宝剣岳の通

過には神経を使い無事通過し、知らぬ間に三ノ沢岳の分岐点に
着いた。この山には何時の日か登りたいと思

っている
霧の中をアップダウンを繰り返しながらの縦走なので何の感激も無く黙々と歩くのみ。時前に

木曽殿山荘に着いた。昭和42年の秋の思い出
蘇ってくる。駒峰ヒユッテには水が無いので木曽義仲の力

水を汲んでから高度差360mの登りに取り付く。上部の岩場は濡れていて滑り易いので神経をすり減ら

し、山頂に
立てど感激なし。地図で駒峰ヒユッテを確認してから下る。小屋は整理整頓されていてストーブ

も使え大感激。時間を掛けて濡れたものを乾かす。外は雨だが、ストーブのお蔭で暖かな一夜となった。


 三日目、朝から雨が小屋の屋根を叩くが、次第に風音に変ったので何とかなるだろうと思って、昨日、

下りてきた道を登りなおして空木岳に立つ。360度遮るものなし。南アルプス、北アルプス、八ヶ岳、木

曽御嶽、乗鞍、奥秩父、恵那山等が望め「感無量」なり。何と言っても友がこの素晴らしい景色に出会えて

一番よかった。天気の良いうちにと先を急ぐ。南駒ケ岳手前の赤
岳に立てば、眼下には鉢窪カール

紅葉が広がり、その見事は言葉に言い尽くせないほどだ。
時間半で南駒ケ岳に着く。昭和42年の秋の面

影は何もなし。
ここから先は初めてなので注意しながら進む。見上げる仙涯は天を突く岩峰でなかなか威

圧的だが、宝剣岳ほどの難所もなくすんなりと通過した。後はなだらかな這い松の尾根を一気に下り、越百

山まで頑張ってしまった。越百山の景色は素晴らしく、縦走してきた甲斐があった。南に続く尾根を見て安

平路山まで一日行程なので次回に大平宿から越百山に来ること確認し合って山を後にした。

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       その他の中央アルプス山行     


●H9・10・17〜19

  大平宿〜摺古木山〜白ビソ山〜安平路山避難小屋〜安平路山〜浦川山〜袴腰山〜奥念丈岳〜南越

  百山〜越百山〜伊奈川ダム

 
煙草切れ嘆く岳人秋を撮る

 白樺を揺らす優しき秋の風

 山静か町も煌く星月夜

 朝寒し南アルプス日の出前

 秋晴れや懐かしき山ばかり見ゆ

 かき分ける背丈の笹に寒露かな

 柿齧る山の一服に安らぎぬ

 山の景独り占めにして秋麗

 天高し岩峰に立ち無想かな

 山小屋人の声あり秋の暮
                    南越百山より越百山・ 仙涯嶺・南駒ケ岳を望む

南越百山
 
 初日は
飯田に3時に友と待ち合せして飯田から大平宿に入る予定だったが、
飯田に来てビックリしたの

は、8月の雨で山崩れのあった飯田から大平峠間が
通行止めなっているとのことだった。仕方なしに飯田山

羽場崎さんに電話を入れたが留守だったので、派出所に登山計画を提出して相談にのって貰ったとこ

ろ、タクシーで昼神温泉から大平峠に入るのがいいと教えてくれた。そこでタクシーで昼神温泉にきたら、

運転手が宿が見つからないといって、運転手の儲けたいばかりに妻籠まで連れて行かれ、やっと民宿に泊ま

ることが出来た。
お蔭て私は思わぬことから妻籠宿見学することができ素晴らしい一夜となった。

 二日目は妻籠からタクシーで紅葉真っ只中の大平宿を経て大平峠の登山口まで入る。天気はよし、景色

はよし、ハイキング気分で藪山に近い摺古木山の登りに取り付く。
途中の沢で3リットルほど水筒に詰め

て、水源のない縦走路に備える。登山道は
藪を漕ぐことしばしば。しかし、途中の大岩に着けば、恵那山や

南アルプスの眺めが素晴らしくいうことなし。摺古木山山頂は樹林の中で展望はない。更に北へと熊笹を掻

き分けて白ビソ山に着くが、ここも展望もなし。倒木や笹を掻き分け原生林を抜けて下った安平路コルにあ

る、平成2年に建てられた安平路山の避難小屋に着いた。ここからは南アルプス、御嶽、安平路山、越百

山、南駒ケ岳、飯田の町が望める、最高の景勝地だ。今宵はここに泊まるので薪と水を確保して、火を起こ

すが薪が乾いていないことも燻りで一晩中苦労しっぱなし。そのため夜は寒くて寝付かなかったが、街のキ

ラメキと満天の星空には大満足。

 三日目、夜明け前の南アルプスのシュルエットは素晴らしい。直ぐ目に入るのは山頂に立った双頭の池

口岳である。
本当に懐かしい。今日も雲ひとつ無い秋晴れ。安平路山へは相変らず笹が深いものの、思っ

たより
短時間で樹林囲まれた山頂に着いた。ここから先は手も入れていないので、踏み跡を確認しながら進

んだり、踏み跡を失い戻ったり、何回繰り返したことか。南アルプス深南部藪山踏破で慣れているとはい

え、友がいるからこそ余りのエネルギー消耗をせずに迷うたびに軌道修正して前進することが出来た。そん

漕ぎが南越百山手前まで強いられる。そこから先にある越百川崩壊地の砂埃には閉口した。鼻の穴の中

まで入り込むのだから始末におえない。疲れ身に鞭打って砂礫の急斜面を
一歩一歩踏みしめて登り、やっと

南越百山
立った。南アルプスの眺めは北から南まで望め言葉は要らない。振り返れば、摺古木山から南越

百山までの稜線が長々と続き、北には越百山、仙涯
、南駒ケ岳までの稜線が一望でき最高の眺めだ。下山

のことも考えて今回の最終地「越百山」に向い、2時半山頂に立てた。感無量なり。疲れ果て体調も崩れだ

し、嘔吐するようになってしまったので友は小屋に泊まろうと言ってくれたが、下りることが先決だと思っ

一気伊奈川ダムへ向かったが、途中で何回も嘔吐したように疲れ果てた山行だった。

●H9・5・2〜3

  黒井沢登山口〜野熊ノ池〜恵那山〜大判山〜神坂峠〜万岳荘〜園原

 薫風や汗を拭わず尾根を行く

 雪解けてぬかる山路の靴の跡

 残雪の踏み跡たしか縦走路

 残雪の遠嶺浮き立つ青き空

 森閑や鶯に耳貸しにけり

 ホテイランに励まされ山旅の中

 五月雨や昔を偲ぶ神坂峠

 山吹や万葉の山道険し

 蛇穴を出でて岳人驚かす

 カモシカに見られて下りぬ山桜

 
昨年秋の越百山に登った時に恵那山に一度登ろうと友と決めていた。山の天気は申し分なし。中津川から

タクシーで黒井沢
登山口まで入る。恵那山は神話、伝説、歴史、そして信仰の山として昔から知られている

いたが、それに加えて深田久弥さんの日本百名山に加えられていることから
人気の山となっている。登山届

を箱に入れて出発。黒井沢沿いの山道の両脇にある沢山の
樹木には名札があり、登山者を楽しませてくれ

る。中津川営林署の親切さが見えてくる。野熊ノ池の避難小屋に着いた。ここで昼食をしていたら何組もの

登山者が下っていく。ここから恵那山の尾根に取り付くと次第に雪が多くなり、道も雪下に隠れてしまう。

アイゼンを持参しているものの面倒なのでそのまま山頂の避難小屋まで登ってしまった。山頂はここから南

に10分ほどのただ広いところにちょこんと石積の中に棒が立っているだけ。何とも味気ない。ここから景

色は望めず。帰ってから小屋の裏の石垣に登れば、南アルプスや御嶽が望める。今宵、小屋に泊まるのは我

々のほかに3名のみ。芦屋市から来た軽装のアベックは日没で下山できず。
彼女の体調も悪いこともあっ

て、急遽、泊まることになった。
晩中ストーブを焚くことにして、みんなで協力してストーブを掃除した

りね薪割りしたり、煙突掃除をしたり、ランプを灯したり、山の
話に花を咲かせたりしながら一時を楽しく

過ごした。夕方から天気も崩れだした。


 二日目、芦屋のアベックが土間で寝ながらストーブの火を絶やさずにいてくれたので、小屋は暖かく快

適に眠れた。今日の天気は午後から雨なので、芦屋のアベックが一番先に小屋を後にした。次に秋川市の男

性を見送り、我々がストーブの後始末をして最後に小屋を出て霧につつまれ出した神坂峠に進路を取った

が、平らな稜線には残雪が多く、歩くのに難儀する。下りにかかると雪解けも進みぬかる道となり滑らない

ように神経を使いながら下る。
軍艦のような稜線も細まり天狗のナギのガレ場にでるが短い距離だったので

それ程の緊張感はなかった。ここから大判山までの長い下りには
うんざりする。その途中で60cmほどの茶

褐色の蛇出くわし、思わず大きな声を出して歩みを止めた。よく見るとマムシではないので彼を見送ってか

ら大判山に立った。曇り空ではあるが、ここからの西・北・南
方面の山岳景色が望める。次第に雨が降り出

下ので先を急ぐが雨具の中は蒸れててしまう。
稜線に出れば雨は横殴り。

 雨の中、神坂峠に着く。ここはアスファルトの峰越林道と霧が原林道が交差しており、遠く万葉の昔から

の重要な要所として開かれた峠には昔の面影は何一つ見当たらない。富士山の望める富士見台へ一番近い万

岳荘
目指し林道を北上したが、霧で富士も見えないので富士見台はカットした。万岳荘周辺には牧場もあ

ってか、園原までの下りは道も広く、山の中にいるとは感じさせないほどだ。やが雨も上がったので蒸れた

雨具を脱ぎ、自然の風にあたりながら歩くのは気持ちのよいものだ。山の牧場を過ぎて麓手前の木立の中に

カモシカがじっと我々を見つめている光景に出くわした。こちらが観察されてしまった。昼過ぎに山吹の咲

き乱れる登山口に着いた。ここに東山道史跡苑もある。古くから東山道の宿場町として栄えた園原の集落ま

で歩いたが、万葉のじだいのからの史跡を見たり、駒つなぎの桜を見たり飽きることはなかった。
長野県の写真「駒つなぎの桜」



中央アルプス 山行年表
昭和38年7月 伊勢滝〜木曽駒ケ岳〜宝剣岳〜千畳敷〜中御所谷〜取水口登山口
昭和42年10月      ロープウェイ山頂駅〜木曽駒ケ岳〜宝剣岳〜空木岳〜南駒ケ岳〜池山〜駒ヶ根鉱泉
昭和63年1月 四合目半正小屋〜木曽御嶽山〜四合目半正小屋
平成1年7月 駒ヶ根駅〜駒ヶ根鉱泉〜ロープウェイ駅=山頂駅〜木曽駒ケ岳〜木曽福島駅
平成4年8月 上ヶ洞〜長峰峠〜四合目半正小屋〜木曽福島
平成8年9月 ロープウェイ山頂駅〜木曽駒ケ岳〜宝剣岳〜空木岳〜南駒ケ岳〜越百山〜伊奈川ダム
平成9年5月 黒井沢登山口〜恵那山〜大判山〜神坂峠〜園原
平成9年10月 大平宿〜摺古木山〜白ビソ山〜安平路山〜奥念丈岳〜南越百山〜越百山〜伊奈川ダム
H22.7.10 現在 8回
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